TIG溶接では気密性が確保できますが、溶接熱により、母材に歪みが発生してしまうことがあります。
歪みを防ぐ方法は主に6つありますが、それぞれデメリットがあります。
筐体設計・製造.COMでは歪みを防ぐ方法として新たな溶接方法を提案しております。

そこで今回は、TIG溶接による気密性の確保と溶接歪みについて解説し、溶接歪みの修正・防止方法、歪みを防ぐ新たな手法をご紹介します。

 

TIG溶接による筐体の気密性の確保


筐体に防水性や気密性が求められる場合、TIG溶接での製作が有効です。

TIG溶接では、使用されている電極の材質がタングステンのため、アークの発生が安定します。
このため、溶接電流の大きさを安定して制御できるので、作業者は母材に与える熱量を的確にコントロールでき、安定した溶接が可能です。
そのため、細かい部分の溶接などでも、TIG溶接であれば溶接ができます。
筐体の隙間などを溶接肉で覆うこともTIG溶接であれば可能です。

 

TIG溶接により筐体に発生してしまう歪み


TIG溶接では丁寧な作業ができ、気密性の確保が可能ですが、注意すべきことがあります。
それは、筐体をTIG溶接で加工すると、筐体が溶接熱による熱変形を起こし、筐体に歪みが発生してしまうことです。

筐体の一部のみを溶接するのであれば、問題はないのですが、全周溶接など広範囲を溶接するとなると、筐体に大きな熱を与えることになり、歪みが発生してしまいます。
この歪みの除去作業は非常に困難であり、余計な工程が発生してしまうことになります。

さらに歪みだけでなく、TIG溶接を行った後の板の裏面には焦げが発生してしまいます。
そのため、TIG溶接後は筐体の外観を綺麗にするために、仕上げ加工が必要になる場合があります。

 

溶接による歪みの発生防止・修正方法


では、TIG溶接で発生する歪みを防止するにはどう対策すればよいのでしょうか?

代表的な手法としては以下のものがあります。

①歪みをあらかじめ考慮した形状の母材を使用する

②溶接箇所の作業順番を工夫する

③仮付けをしてから溶接する

④溶接熱を逃しながら溶接する

⑤素材を治具で固定する

⑥変形した部分を叩きながら溶接する

今回は①②の手法について詳しくご説明いたします。

①歪みをあらかじめ考慮した形状の母材を使用する


これは、溶接後に目的の形状の製品になるよう、設計・母材の製作段階であらかじめ歪みを考慮しておくという手法です。
溶接後に、筐体の歪みを修正する必要がないため、出来上がりの精度が高いというメリットがあります。

しかしながら、どれくらい歪みが発生するかは、素材によっても変化するため、歪み量の予測は長年の経験が必要となります。
そのため、職人間で経験の差が生まれてしまいます。

 

②溶接箇所の作業順番を工夫する


これは、特定箇所に溶接熱が集中しないように、溶接箇所を分散させながら溶接する手法です。
筐体の片側の溶接が完了したら、次は反対側の溶接を行うなどします。
一度最適な溶接順序を見つけることができたら、その方法を他の人にも伝えることで、経験の少ない職人さんでも、歪み対策できるようになります。
そのため、生産現場ではこの手法が広く活用されております。

ただ、この手法ですと、製品ごとに最適な溶接手順を見つけ出す必要があり、それを見つけ出すのは熟練の職人さんでないと難しいです。
また、その手法を他の人でもできるようにするためには、マニュアルの作成や指導が必要であり、かなりの工数がかかってしまいます。

 

 

 

上述の通り、歪みを抑える方法には様々な手法がございます。
ですが、長年の経験が必要であったり、工数がかかってしまうなど、どれも一筋縄ではいきません。

実は、筐体の気密性を確保しつつ、歪みを抑えながら溶接できる方法がございます。

 

 

歪みを抑える新たな溶接方法【ファイバーレーザー溶接】


それは、「ファイバーレーザー溶接」と呼ばれる、専用の溶接ロボットを用いた溶接手法です。

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ファイバーレーザー溶接では、高いエネルギー密度で局所的にレーザー光を照射することができるため、筐体自体に熱が溜まりづらく、筐体への熱影響が少ない溶接が可能となります。
このため、TIG溶接では製作が困難な、歪みの少ない板金筐体を製作できます。

その上、ロボットが作業を行うため、製品の仕上がりが均一になります。

また、溶接部分は母材金属が溶融して一体化しているため、母材と同等の耐久性を持ち、十分な強度を保つことができます。

さらに、ファイバーレーザー溶接の場合は裏面にも焦げは発生しないため、仕上げ作業が少なくなり、効率の良い筐体製作が可能になります。

当社では、TIG溶接で気密性の保持を試みていたお客様の歪みの問題をファイバーレーザー溶接への工法転換により解決した事例がございます。ぜひこちらもご覧下さいませ。

>>TIG溶接からファイバーレーザー溶接に工法転換することで、歪みレス溶接を実現!

 

ファイバーレーザー溶接についてより詳しく知りたい方は以下のリンクからご覧くださいませ。

>>ファイバーレーザー溶接とは? メリット・デメリットについて解説

>>ファイバーレーザーとは

>>ファイバーレーザー溶接と材質の対応表

>>ファイバーレーザー溶接による薄板の歪みレス板金溶接

 

当社ならではのファイバーレーザー溶接サービス

 

筐体設計・製造.COMを運営する岡部工業株式会社では、ファイバーレーザー溶接を行う6軸多関節ロボットを3台保有し、オリジナル冶具の内製まで一貫生産をしております。
これにより、高い生産性を保ちつつもコストダウンを可能にする、岡部工業ならではのファイバーレーザー溶接が実現します。

また、当社にはファイバーレーザー溶接の開発を専門にする課があり、通常は溶接困難なアルミやステンレス、異種金属などのサンプル溶接から、筐体設計におけるVE提案まで行い、お客様に寄り添った設計開発を行っております。

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筐体設計・製造.COMを運営する岡部工業株式会社は、群馬県から発信するグローバル板金ソリューションカンパニーとして、お客様の板金や筐体に関するお困りごとを解決いたします。

中国工場とも連携した幅広いネットワーク最新鋭のファイバーレーザー溶接ロボットを代表とした圧倒的な設備力、さらに創業以来から大手メーカーとの取引によって積み重ねてきた板金設計・筐体設計のノウハウを活かして、お客様の課題を解決していきます。

筐体という製品は、一度製作したら長く使用するものです。
だからこそ、安心安全かつ使い勝手がよく長持ちする製品であるべきです。
しかし筐体設計は、
目的や用途、使用環境、精度、特性、コストなど数多くの要求を満たす必要があります。
また、筐体設計は、実際の製作現場である下工程についても最適な工程を考える、全体最適な視点が必要なプロフェッショナルな仕事です。

そのような筐体製作には、生産現場からの設計サポートと、高度な生産技術力が、量産体制の場合は特に求められます
部品点数を1つ減らしたり、工程を1つ短縮するだけでも、量産での筐体製作の場合は大きなコストダウンや納期短縮につながるのです。

設計初期の段階から当社にご相談いただけましたら、当社にて生産技術的な要素を設計に取り込んだ上で、筐体製作を行います。
そうすることで、当社の金型や設備、製造ノウハウを盛り込んだ筐体が製造可能となり、低コストで品質の良い筐体を短納期で製作できます。

筐体設計に少しでもお困りの方は、まずは筐体設計・製造.COMにご連絡ください。板金ソリューションカンパニーとして、あなたのお悩みを解決いたします。
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