精密板金加工における図面作成の重要性とは?

 

精密板金加工における図面は、単なる形状や寸法を伝えるためのものではありません。図面は、設計者の意図を加工現場に正確に伝え、製品の品質、コスト、納期を決定づける極めて重要なものです。特に、高精度が求められる精密板金の世界では、図面のわずかな不備が、加工後の手戻りや再設計といった深刻な問題を引き起こす可能性があります。

設計者はCAD上で理想的な形状を追求しがちですが、現実の板金加工には、材料の板厚、曲げの内R、溶接による熱歪みなど、さまざまな物理的制約が存在します。これらの制約を考慮せずに作成された図面は、たとえ寸法が正確でも、加工現場での作業性を著しく低下させ、最終製品の品質に悪影響を及ぼします。

したがって、精密板金図面には、単に形状や寸法を正確に表現するだけでなく、加工プロセス全体を考慮した深い洞察が求められます。加工の各工程(切断、曲げ、溶接、仕上げ、塗装など)を熟知し、それぞれの工程で発生しうる課題を事前に予測し、図面に反映させる必要があります。これにより、加工現場での混乱をなくし、効率的な生産プロセスを確立することが可能となります。精密板金加工における図面作成は、設計者と技術者をつなぐコミュニケーションの鍵であり、製品の成功を左右する最初のステップです。

 

精密板金製品・筐体の図面作成で考慮すべきこと

 

精密板金製品や筐体の図面を作成する際は、単に形状を正確に描くだけでは不十分です。加工現場での生産効率や最終的な品質を左右する、いくつかの重要なポイントがあります。これらを理解し、設計に反映させることで、後戻りをなくし、理想的な製品製作に繋げることができます。

 

設計初期段階からのサポートとVE/VA提案

 

多くの企業が抱える課題の一つに、図面作成の時点で加工上の制約やコスト、量産性を十分に考慮できていないという点があります。特に、「ポンチ絵」「仕様書」といった初期段階のイメージから設計を始める場合、その後の工程で様々な問題が発生するリスクが高まります。

理想的なのは、設計初期から加工のプロフェッショナルが関わることです。加工工程を熟知した専門家によるVE(Value Engineering)/VA(Value Analysis)提案を設計段階から受けることで、材料費や加工費の削減、工程の短縮など、コストダウンにつながる可能性を最大限に引き出すことができます。例えば、曲げRの適正化や、溶接箇所の見直しなど、些細な変更が全体コストに大きく影響するケースは少なくありません。

 

製造プロセスを深く理解した設計の重要性

 

設計者が加工プロセスを深く理解しているかどうかが、図面の品質を大きく左右します。例えば、板厚や曲げの指定、溶接熱による歪みなど、板金加工特有の物理的な制約を無視した設計は、加工性の低下や品質不良の原因となります。製造プロセスを深く理解した設計者は、加工・製作時の作業性を向上させるための工夫を盛り込むことができます。具体的には、部品点数を削減する設計、効率的な溶接を可能にする形状、塗装や組立を容易にする構造などです。これにより、最適なコストで高品質な大型筐体を製作することが可能になります。

 

部品点数の多い大型筐体における累積公差の考慮

 

部品点数の多い大型筐体では、個々の部品の精度が高くても、溶接や締結による組み立て時に累積公差によるズレが生じやすいという特性があります。これにより、組み立て時に部品が干渉したり、大規模な補正作業が発生したりするケースが少なくありません。これを防ぐためには、設計段階で累積公差を考慮した図面を作成する必要があります。具体的には、溶接順序の最適化、歪みを最小限に抑えるための溶接方法の指定、さらには逆歪みを活用するといった高度なノウハウが求められます。

 

当社が図面作成においてできること

 

筐体設計・製造.COMを運営する岡部工業は、単なる加工業者ではなく、「板金ソリューションカンパニー」として設計からお客様のお困りごと解決に貢献いたします。私たちは、お客様が抱える図面や設計に関する潜在的な課題を解決し、最終製品の品質向上、コスト削減、そして納期短縮に貢献します。

 

数千種類の設計経験を持つプロフェッショナルがサポート

 

多くの大企業が抱える「細かい溶接の種類や加工方法等の知見・ノウハウを熟知した設計者がいない」という課題に対し、当社には累計数千種類もの筐体設計に携わってきた板金設計者が在籍しています。この豊富な経験は、多様な筐体、特に部品点数が40~50点から、多いものでは400点を超えるような大型筐体や大型精密板金品の製作において、その真価を発揮します。

 

図面がない段階からのVE提案でコストを削減

 

当社の強みは、完成された図面がなくても、お客様の「ポンチ絵」や「仕様書」といった初期段階のイメージから、具体的な筐体設計を支援できる点にあります。実は、こうした仕様のみが決まっている板金筐体こそ、当社の強みを最大限に発揮し、お客様に大きなメリットをもたらすことが可能です。

当社は、筐体設計段階からのVE(Value Engineering)提案を得意としております。当社の工程を熟知した技術・設計者による提案を設計段階から受けることで、材料費や加工費の削減、工程の短縮など、コストダウンにつながります。例えば、曲げRの適正化や、位置決め方法の最適化、ダボの位置変更など、些細な変更が全体コストに大きく影響するケースは少なくありません。設計初期から当社にご相談いただくことで、当社の金型や設備、製造ノウハウを設計に積極的に盛り込むことが可能となり、結果として大幅なコストダウンを実現しながら、お客様のご要望に沿った板金筐体製品をご提供することができます。

 

効率化と品質向上に繋がる具体的な設計・加工提案事例

 

私たちは、長年の経験から得た知見を活かし、様々な視点から具体的な設計改善を提案します。例えば、NCT加工順序の改善やミクロジョイントの工夫による歪み防止、ウイングベンド金型の導入による擦り傷防止、ダボの凹みを隠れる位置への設計変更による外観品質向上など、多岐にわたる課題解決提案事例があります。これらの事例は、机上の設計論だけでは得られない、現場を知り尽くしたプロの目線だからこそ可能な提案です。

 

筐体設計・製造.COMの精密板金・筐体製造でできること

 

筐体設計・製造.COMは、単に図面通りに部品を製作するだけでなく、お客様の課題解決に貢献するための幅広いサービスと独自の強みを提供しています。

 

設計から精密板金加工、塗装まで。筐体製造をワンストップ対応!

 

当社は、設計から精密板金加工、溶接、塗装、そして組立まで、筐体製造に関わる全工程を自社内で一貫して行う「ワンストップサービス」を提供しています。この体制により、各工程間の連携が密になり、情報伝達のロスをなくすことができます。その結果、品質の安定、コストの最適化、そして納期の短縮を実現します。特に、近年ではAIを活用した組立現場や部品倉庫により、高効率な生産体制を確立し、お客様のニーズに迅速に対応しています。

 

ファイバーレーザー溶接による薄板の歪みレス板金溶接

 

溶接は、精密板金加工において製品の品質を左右する重要な工程の一つです。特にステンレスや薄板の溶接では、熱による歪みが発生しやすく、後工程での修正作業が必要になる場合があります。当社は、この課題に対し、ファイバーレーザー溶接ロボットを4台保有することで対応しています。

ファイバーレーザー溶接は、熱影響を最小限に抑えることができるため、歪みのない高精度な溶接が可能です。これにより、溶接後の仕上げ作業が不要となり、工数削減に大きく貢献します。また、通常は溶接が困難なアルミ、ステンレス、異種金属の溶接にも対応しており、お客様の多様なニーズに応えることができます。

 

100を超える課題解決提案事例

 

当社には、創業以来、ATMや金庫といった金融業界向けから、近年需要が急増している医療・理化学業界向けまで、多種多様な精密筐体を手掛けてきた豊富な実績があります。これらの経験から、私たちは100を超える具体的な課題解決提案事例を蓄積してきました。

例えば、溶接位置をマークで明確化する、連続溶接から断続溶接へ変更する、溶接長を意識した板金展開など、お客様の課題に合わせた最適な解決策を提案します。これらの事例は、机上の空論ではなく、実際の製造現場で成果を上げた、生きたノウハウです。

 

図面・設計の提案事例

 

図面の書き方-溶接仕上げとマスキングの関係

図面の書き方-溶接仕上げとマスキングの関係

今回の溶接部品には、親図面とサブ溶接図面の2つがあり、全体図面の設計者が親図面を確認し、溶接作業者はサブ溶接図面を見て作業するという流れでした。親図面はメッキ鋼板の板金部品で、溶接後に塗装するためのマスキング指示がありました。サブ溶接図面では、メッキ鋼板部品にサブ溶接し、溶接仕上げを施しています。

ここでサブ溶接の図面にて、溶接仕上げをした箇所は、元々の材料であるめっき鋼板のめっきが除去されています。しかし、サブ溶接後の仕上げ箇所が親図面でマスキングされてしまうと、めっきがない鋼板が表面に露出してしまい、錆び発生の原因につながってしまいます。そこで、、、

>>>詳細はこちら

 

図面の視点を実際の作業視点と一致するように図面を変更

 

図面の視点を実際の作業視点と一致するように図面を変更して、品質トラブルを防止!

図のような板金部品に対してクッション材を貼るという図面の場合、実際に現場作業者がクッション材を貼りつける際は、もちろん貼り付ける面を上に向けて作業を行います。しかし図面においては、クッション材を貼り付ける面が裏側となっています。このため実際に作業をする際は、頭の中で図面から表裏を反転した状態を想像して、図面を見ながら貼り付け作業を行います。ところが、図面の通り左右や穴の位置が異なるため、クッション貼り付け位置が左右方向で異なるのを見落としてしまうと、正しく貼り付けたものの左右方向の貼り付け位置が逆になってしまった、というミスが発生しかねません。そこで、、、

>>>詳細はこちら

 

製品事例のご紹介

 

【事例1】アルミ筐体(A5052P)|ファイバーレーザー溶接による高意匠性の実現

工作機械用アルミカバー(ファイバーレーザー溶接)

本事例は、全体がアルミ材で構成された外装カバーであり、溶接による熱変形や割れが起こりやすい条件下にある製品でした。通常のファイバーレーザー溶接機では、フィラーワイヤーの位置制御が難しく、連続溶接が困難でしたが、岡部工業では自動フィラー制御対応の第5号機を導入することで、断続かつ安定したアルミ溶接を実現しました。

>>工作機械用アルミカバー(ファイバーレーザー溶接)製品事例はこちら


 

【事例2】大型SPHCカバー|1,700×2,300mm級サイズへの防水・塗装対応

工作機械用大型カバー

この製品は、マシニングセンターに取り付けられる大型の製缶板金製カバーで、全体のつなぎ目に段差や歪みが生じないよう、溶接時に都度寸法を確認しながら作業を進める必要がありました。特に、内部からのクーラント液漏れを防ぐために、防水検査工程を追加し、機能面でも厳しい要求をクリアしています。

>>工作機械用大型カバーの製品事例はこちら


※掲載可能な事例は一部となっております。その他、NDA(秘密保持契約)により公開できない実績も多数ございます。詳細については、お問い合わせください。

>>事例一覧はこちらから

 

精密板金図面に関するお悩みは、筐体設計・製造.COMにお任せください

 

筐体設計・製作.COMには、累計数千種類もの筐体設計に携わってきた板金設計者が在籍しております。筐体や板金の設計に関して不安を抱えていらっしゃる方は、現場を知り尽くした板金設計のプロフェッショナルに、まずはご相談することをおすすめしております。

筐体・板金設計に関して一番の課題は、細かい溶接の種類や加工方法等の知見やノウハウを熟知した設計者が、多くの大企業にはいないということです。多くの筐体製作者は、「こういう筐体をこうやって使いたい」「これくらいのサイズでこんな特性のある筐体がほしい」と考えます。しかし、実際にそのような筐体を設計・製作するとなると、どうしても筐体の目的や役割に視点が偏ってしまい、板金の穴の位置や曲げ度合い、加工工程のプロセスといった筐体製作の下工程を無視した設計をしてしまうことが多くなります。

そのため、無理難題な筐体製作を下請け業者に依頼してしまうケースが多く、結果としてなかなか筐体を製作どころか、試作すらもできないようなことも多々あります。つまり、筐体設計における課題は、板金設計などの筐体製作の下工程に熟知しており、さらに全体最適なバランスを取ることができる設計者や製作メーカーでなければ、最適な筐体設計をすることができないという点です。

当社では、設計初期の段階から生産技術的な要素を設計に取り込み、筐体製作を行います。そうすることで、当社の金型や設備、製造ノウハウを盛り込んだ筐体を製造することが可能となり、低コストで品質の良い筐体を短納期で製作することができます。

筐体設計に少しでもお困りの方は、まずは筐体設計・製造.COMにご連絡ください。私たちは、板金ソリューションカンパニーとして、お客様のお悩みを解決いたします。