今回のテクニカルニュースの概要
今回ご紹介するのは、NCT(タレットパンチプレス)の「抜き落とし」を活用し、工数をかけずに特注ワッシャを製作した課題解決事例です。
抜き加工において、通常はスクラップとして捨てられる「抜き落とした側」を製品として活用した逆転の発想が、今回のポイントです。内径・外形それぞれ1ショット、わずか2ショットの打ち抜きでワッシャが完成するため加工時間を大幅に短縮できます。レーザー切断で製作した際に必要となるミクロジョイントが不要となるため、バラシ作業・仕上げ作業も丸ごと削減いたしました。

※ミクロジョイントとは、製品の外形を切断する際、加工中に製品が切り離されないように外枠と製品を繋ぐ細い部分のことです。
抜き落としとは?
抜き落としとは、板金加工における「抜き加工」とほぼ同義で、NCT(タレットパンチプレス)の金型で材料を打ち抜き、打ち抜いた部分をそのまま落下させることを指します。
NCT(タレットパンチプレス)とは、抜き工程で使用されている多品種少量生産向きの工作機械です。鋼板から部品の外周を打ち抜くことで必要な形状を加工します。打ち抜く形状が複雑になっても対応できるように、NCTには正方形、長方形、丸などの多様な形状の金型が自由に選択できるようになっています。
NCTによる抜き加工では通常、材料側に製品を残すように加工し、不要な部分を抜き落としていきます。打ち抜かれて落下するのは抜きカス、すなわちスクラップとして排出し、処理されます。
課題:レーザー切断によるワッシャ製作は、加工時間が掛かるうえ、バラシ・仕上げ工程が発生してしまう
従来の加工方法(レーザー切断)
従来、岡部工業の社内でワッシャを製作する場合は、以下の手順でレーザー切断により製作していました。
①材料から、ワッシャの内径部分をレーザカットする。

②レーザカットすると、内径部分は抜け落ちて、スクラップになる。

③複数個必要な場合は、①~②を繰り返す。

④外形抜きを行い、ワッシャの形状が完成する

しかし、このレーザー切断による加工方法には、大きく2つの課題がありました。
課題1:レーザー切断のため、加工時間が掛かってしまう
レーザー切断では、内径・外形ともに円周をレーザでなぞって切断していくため、1個あたりの加工時間がどうしても長くなってしまいます。複数個の製作となれば、その分だけ加工時間は積み上がっていきます。
課題2:紛失防止のためのミクロジョイントにより、バラシ作業と突起部の仕上げ作業が発生してしまう
レーザー切断では、外形をそのまま切り落とすと、小さなワッシャは機械内に落下し、紛失してしまいます。そのため、製品と材料をつなぎとめておくミクロジョイントが必要となります。ミクロジョイントとは製品の外形を切断する際、加工中に製品が切り離されないように外枠と製品を繋ぐ細い部分のことです。
しかし、ミクロジョイントを設けると、加工後にワッシャを材料から取り外す「バラシ作業」が発生します。一つ一つのワッシャを取り外す必要があります。
さらに、切り離した製品側にはミクロジョイントの痕の突起が残ってしまいます。このため、突起をなくすための研磨などの突起部の「仕上げ作業」まで必要になってしまいます。

筐体設計・製造.COMの対策:NCTで「抜き落とした側」を製品として活用し、ワッシャを製作!製品BOXの設置で紛失も防止!
そこで当社では、レーザ切断からNCT加工へ工法転換し、「抜き落とし」を活用したワッシャ製作を行いました。加工手順は以下の通りです。
①NCTでワッシャの内径部分を抜き落とし。内径部分は、スクラップBOXへ。

まずは、NCTの抜き加工にてワッシャの内径部分を打ち抜きます。抜き落とされた内径部分はスクラップのため、そのままスクラップBOXへ落下させます。
②ワッシャの外形部分を打ち抜ぬく。抜き落としたワッシャは製品BOXへ。
続いて、ワッシャの外形部分を打ち抜きます。ただし、外形部分は製品となるため、そのまま抜き落とすとスクラップBOXの中でスクラップと混在してしまい、紛失のおそれがあります。
そこで、内径部分の加工後にプログラム内へ一時停止の指令を入れ、スクラップBOXの位置に製品BOXを設置し直してから外形を打ち抜く運用としました。これにより、製品だけを製品BOXで確実に受け取り、取り出すことができます。
この工法転換により、従来の課題を以下の通り解決しました。
- わずか2ショットで製品が完成し、加工時間を大幅に削減し、バラシ作業・仕上げ作業も不要に
レーザで円周をなぞって切断していた従来工法に対し、NCTでは打ち抜くだけのため、そもそもの加工速度がレーザ切断よりも速くなります。しかも内径・外形の合計2ショットの打ち抜きでワッシャが完成するため、加工時間を大幅に短縮することができました。また、ミクロジョイント自体が不要となったため、バラシ作業も、突起部の仕上げ作業も丸ごと削減することができました。 - スクラップBOXと製品BOXを分けることで紛失を防止
製品BOXの設置により、抜き落とした製品がスクラップと混在・紛失することがなくなりました。ワッシャという小さい部品の管理の煩雑さも低減することができました。
なお、今回はワッシャの事例をご紹介しましたが、この工法は専用の抜き金型さえ準備すれば、ワッシャ以外の小物部品にも同様に展開することが可能です。
今回の改善は、単なる社内の工数削減にとどまりません。わずか2ショットで製品が完成するため加工時間が大幅に短縮され、バラシ作業・仕上げ作業という人手の後工程も丸ごと不要となりました。特注ワッシャを別途外部へ手配する場合に発生する調達コストや手配工数も掛からないため、当社が筐体・装置部品をご提供しているお客様(各種産業機械・装置メーカー様)に対して、部品コストを抑えたかたちでのご提供が可能となっております。
このように、保有設備を最大限に活用した工法転換のご提案(VA/VE)の他、精密板金筐体のパートナー企業をお探しの方は、まずは一度当社までご相談いただけましたら、最適な板金筐体設計のご提案をいたします。貴社の課題解決を強力にサポートいたします。是非お気軽にご相談下さい。
NCT(タレットパンチプレス)を活用した課題解決事例
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【金型干渉による外周付近のダボつぶれを『抜き工程』と『ミクロジョイントの配置』を工夫して解決!】テクニカルニュースvol.92
【NCTの工程順を改善して、端面近くの歪みを防止!】テクニカルニュースvol.87
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【NCTでタップに皿モミ加工して板金加工の高品質化&高効率化!】テクニカルニュース vol.60
【クラスターパンチ金型で反り低減と工数削減!】テクニカルニュース vol.41
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筐体設計・製造.COMでは、設計者・開発技術者様向けに、筐体板金加工に関する技術をまとめた、『技術ハンドブック』を発行しています。技術ハンドブックには、設計・開発段階からのコストダウンや品質向上を実現するための具体的なVA・VE提案を実際の事例に沿った形でイラスト付きで解説をしています。
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