今回のテクニカルニュースの概要


今回ご紹介する事例は、外側塗装の際に裏面を全面マスキングをしたことで塗装バリの除去工程が発生していた筐体板金に対して、端面から2,3mm内面に引っ込めることで塗装バリの除去工程を削減しコストダウンにつなげることに成功した技術提案事例です。

お客様からは、外側塗装有りの筐体板金の量産製造のご相談をいただきました。通常このような場合は、内面の端面ギリギリまでマスキングテープを貼って塗装しますが、マスキングテープを剥がした際に塗装バリが発生してしまいます。この塗装バリは、美観性や安全性を考慮して除去する必要がありますが、除去工程の分だけ時間的にも費用的にもコストがかかってしまいます。

そこで筐体設計・製造.comでは、お客様に製品の使用用途等を詳細に確認した上で、端面から2,3mm引っ込めてマスキングテープを貼るように変更提案いたしました。こうすることで、塗装バリは発生しなくなり、バリ除去工程を削減することに成功いたしました。わずかなご提案ですが、量産の場合は少しの変更てで大きな効果を生むことができます。今回も量産でのご依頼だったため、お客様に大きなコストメリットをお届けすることができました。

 

 

外側塗装の際に裏面を全面マスキングしてしまうと、塗装バリの除去工程が発生してしまう…

今回お客様からは、筐体板金を量産にて製造依頼をいただきました。その際に、筐体の外側のみ塗装をするように指示をいただきました。

 

このような外側塗装のみの場合、つまり裏面を塗装したくない筐体板金の場合は、表面(外側)と端面を塗装することになります。その際には、多くの場合は端面までマスキングテープを貼るように図面上でも指示をいただくことがほとんどです。

しかし、裏面を全面マスキングしてしまうと、塗装時に端面とマスキングテープの隙間(稜線)に塗料が溜まってしまい、塗装バリが発生してしまいます。

この塗装バリは、もちろん大きいバリだと怪我の原因にもなってしまいます。また、外面に見える場所の場合もありますが、その際には美観性を損ねる原因にもなってしまいます。

そのため、塗装バリが発生してしまった際には、バリを除去する必要があります。このバリ除去工程は、当社でもヤスリで行っていることが多い工程です。

 

また、裏面全面をマスキングという指示のため、下図のように端面からはみ出してマスキングテープを貼ることも可能です。しかしこのような貼り方でも、塗料がマスキングテープに乗ってしまうため、バリが別の方向に生じてしまいます。

当社でも、実際に量産製造に入る前は、塗装バリを除去する工程込みで検討していました。しかし当社の現場スタッフから、塗装バリの除去工程に時間がかかってしまう点と、除去工程の分だけ作業費もかかってしまう点を踏まえて、なにか技術提案できないかという意見が生じたため、社内で様々な視点でアイデアを出し合いました。

 

 

筐体設計・製造.COMの提案:端面から2,3mm引っ込めてマスキングテープを貼るように変更!

その結果として筐体設計・製造.COMでは、お客様に製品の使用用途等を詳細にお伺いした上で、マスキングテープの貼り方を変更いたしました。具体的には、下記写真のように、従来は筐体板金の裏面前面にマスキングテープを貼って、端面ギリギリまでマスキングしていたところを、端面から2,3mm引っ込めるように変更いたしました。

 

端面から2mmまでの裏面はマスキングしていないため、塗料は乗ってしまいます。しかしマスキングの目的は導通確保のためであり、内面数ミリに乗った塗料は特に問題ありません。

またマスキングテープの端面は平面のため、外面塗装後にマスキングテープを剥がしても、塗料バリは発生しません。つまり、バリ除去工程がなくなります。

 

バリ除去工程がなくなった分だけ、短納期かつ安価に製品をお届けすることができるようになりました。特に今回の筐体板金は量産製品だったため、数が多い分だけ納期と価格に大きなメリットをご提供することができました。

 

マスキングテープを貼る際の作業を想像いただければお分かりになると思いますが、マスキングテープを端面から2,3mm離して貼るのはなかなか大変です。マスキングテープを貼る際の作業のみを考慮すれば、端面に沿って一気に貼ってしまった方が短時間で済みます。しかし端面までマスキングテープを貼ってしまうと、上記のように塗装バリが生じてしまいます。

今回のように2,3mmマスキングテープを内面に引っ込めて貼ることができ、かつ塗装バリの除去工程を削減する方がメリットが大きい場合など、様々な条件を考慮した上でしか、今回の技術提案は有効ではありません。しかし当社では、筐体板金部品への塗装についても多種多様な事例がございますので、お客様の製品に応じて最適なご提案をいたします。

 

もし条件が合致していたり、塗装マスキングが内面まで入っても大丈夫という場合は、下記のように図面にてマスキングの指示を記載いただければと思います。

 

 

まとめ

筐体設計・製造.COMでは、精密板金加工や大型筐体の製造だけでなく、その後の塗装工程まで一貫対応しております。特に近年は板金塗装に関するご相談を多くいただいております。筐体塗装についても事例から技術提案ノウハウまで多数保有しておりますので、精密板金加工品や筐体の塗装でお困りの方は、ぜひご相談ください。

 

筐体設計・製造.comを運営する岡部工業では、お客様への日々のVE提案に加え、生産性の高い機器を積極的に活用することで、お客様のご要望に柔軟に応えて参ります。筐体の設計・製造、あるいは筐体の板金部品加工など、お困りのことがありましたら当社にご相談くださいませ。

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