今回ご紹介する事例は、溶接で対応するような底の深い箱の曲げ加工を、延長パンチグリップを用いて深い箱曲げ加工を実現した技術提案事例です。

箱を曲げ加工する場合は、箱曲げ用の金型によって曲げ加工を行うことが一般的です。しかし今回のお客様からご依頼いただいたのは、通常の金型では干渉してしまうため溶接で対応せざるをえない、底の深い箱の曲げ加工でした。

深い箱曲げは、延長パンチグリップで美観性向上+コストダウン!

このように溶接で対応するしかないような底の深い箱曲げ加工の場合は、筐体設計・製造.COMでは延長パンチグリップと呼ばれる部品を箱曲げ用の金型に取り付けて曲げ加工します。

ただしこの金型は、通常の箱曲げ用の金型よりも板厚や材質等の使用条件が狭まるため、実際に使用できるかどうかは箱曲げ加工に精通した方でないと判断することはできません。筐体設計・製造.COMには、箱曲げ加工のプロフェッショナルが多数在籍しておりますので、深い箱曲げ加工であっても、お客様の製品の材質や形状、ロット数などの要素をすべて考慮した上で最適な判断を下すことができます。

 

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テクニカルニュースvol48でご紹介したように、深曲げ加工については、リターンベンドグラフにて曲げ加工の可否を判断することができます。

しかし、左右に曲げが追加されると、以下の図のような箱曲げになります。この箱曲げ形状は板金筐体にはよくある形状で、当社で取り扱う筐体においても、箱曲げが必要な板金部品が多くございます。この箱曲げ形状の曲げ加工の加工可否を判断するためには、リターンベンドグラフ以外の注意点が必要になります。

 

箱曲げ形状に曲げる場合、まず母材をコ曲げ形状に曲げます。その後残りの部分をコ曲げ形状に曲げますが、この際に以下の図のように、先に曲げてある左右の曲げ(サイドフランジ)が曲げに合わせて回転して立ち上がります。

 

底の浅い箱形状に製作する場合は、以下の写真に示す箱曲げ専用の金型を用いることで、母材を箱形状に曲げ加工できます。

 

しかし箱の底が深い場合は、以下の図のように、曲げが完了する前に箱とベンダー機械そのものが干渉してしまって、曲げ加工が最後まで行えなくなる場合があります。

 

 

このような場合は、曲げの代わりにサイドフランジを溶接して仕上げることが一般的です。
ベンダーへの干渉を回避するために、部材の側面部分を分割し、全周溶接によって箱を製作します。

しかし、溶接すると美観性が損なわれてしまうため溶接を施すことが難しい部品もあります。今回のお客様からご依頼いただいた箱曲げ部品も、美観性が求められる部品でした。また、溶接の手間もかかってしまいます。

 

 

 

 

そこで当社では、このように美観性が求められる場合は、通常のパンチグリップに追加して、延長パンチグリップを金型に取りつけて曲げ加工します。
以下は、延長パンチグリップを金型に取り付けた状態の図と延長パンチグリップの実物の写真です。

 

パンチグリップを取り付けた金型およびベンダーの外観は以下のようになります。

この延長パンチグリップは、サイドフランジを逃がす場所を確保するための部品で、曲げパンチの先端をベンダー機械の本体から遠ざける部品です。これによって、サイドフランジを逃がすことができます。

以下の写真のように箱形状に仕上がります。

 

延長パンチグリップによる深い箱曲げ加工の実際の動画がございます。
実際に深い箱曲げ加工をしている様子をご覧いただけます。

>>動画で実際の加工の様子を見る

 

 

箱曲げ形状は通常外観面側に見える場所にあります。そのため、美観性を保つために極力溶接を避けたい部品と言えます。ですが、サイドフランジを曲げ加工できない場合は、通常、曲げの代わりにサイドフランジを溶接し、仕上げすることになってしまいます。今回の事例のように延長パンチグリップを使用して曲げで加工できれば、溶接不要で美観性を保てる上に、コスト低減にも繋がります。

ただしこの金型は、通常の箱曲げ用の金型よりも板厚や材質等の使用条件が狭まるため、実際に使用できるかどうかは箱曲げ加工に精通した方でないと判断することはできません。

筐体設計・製造.COMには、箱曲げ加工のプロフェッショナルが多数在籍しております。そのため、深い箱曲げ加工であっても、お客様の製品の材質や形状、ロット数などの要素をすべて考慮した上で、通常の箱曲げ用金型か、延長パンチグリップを用いるべきか、側面部分を溶接して仕上げるか、といった選択肢の中から最適な判断を下すことができます。

深い箱曲げ加工でお断りをされた方は、まずは筐体設計・製造.COMにご相談くださいませ。

 

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筐体設計・製造.COMを運営する岡部工業では、お客様への日々のVE提案に加え、生産性の高い機器を積極的に活用することで、お客様のご要望に柔軟に応えて参ります。筐体の設計・製造、あるいは筐体の板金部品加工など、お困りのことがありましたらぜひ当社にご相談くださいませ。

 

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