今回のテクニカルニュースの概要
今回ご紹介するのは、キャスターの受け皿部品において、「C面取りによる視覚的な識別」と「専用治具による物理的な規制」を組み合わせ、ヒューマンエラーを未然に防ぐ「ポカヨケ」を実現した改善事例です。

本事例の最大の特徴は、実際の製作に入る前の工程検討段階で「取り付けミス」のリスクを予見し、あらかじめ面取り加工の追加や治具構造の工夫を組み込んだ点にあります。量産着手前に課題を膿出しすることで、手戻りリスクを排除し、高い品質安定性を確保した具体的なプロセスを解説いたします。
課題:キャスター受け皿部品が取付向きが判別しにくく、取付ミスが懸念される…
本事例では、ボックス形状の製品底面にキャスター設置用の受け皿部品を取り付ける仕様です。この受け皿部品は四角形状で4か所のネジ穴が開いた部品であり、一見すると左右対称に近い形状をしています。
しかし、左右非対称な部品であり、取り付けの向きが厳密に決まっております。このため、作業者が向きを誤って、逆向きに溶接してしまうと、以下ような問題が発生してしまいます。
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機能不全(干渉)
完成後にキャスターを取り付けようとした際、逆向きに付けられた受け皿の壁面とキャスターが干渉し、正常な取り付けができない。 -
多大な手戻り工数
溶接後にミスが発覚するため、サンダー等で部品をはずして再製作・再溶接が必要になり、納期とコストを圧迫する。

このように、作業者への注意喚起のみに頼る属人的な管理では、量産時のヒューマンエラーを完全に防ぎきれないことが、図面をいただいた段階で、大きな課題として懸念されていました。
筐体設計・製造.COMの対策:視覚と物理による「二段階」のポカヨケ対策
そこで、筐体設計・製造.COMでは、現場の熟練度や属人的な確認作業に頼らず、誰が作業してもミスが起きない仕組みとして、以下の対策を講じました。
対策①:部品コーナーへの「C面取り」追加による視覚的な識別
部品のコーナーの1箇所に、「C面取り」を施しました。これにより、図面や作業指示書と照らし合わせた際、部品の向きを一目で判別できるようになりました。なお、この設計変更は、機能上の影響がないことを事前にお客様へ提案し、承認を得た上で実施しております。

しかし、この段階では「注意すれば分かる」状態であり、物理的に部品の取付ミスを防ぐまでには至りません。作業者の不注意により、取付の向きを誤る可能性がございました。
対策②:C面取りに整合させた「干渉型位置決め治具」の導入
そこで当社では、対策①で検討したC面取りを活用し、物理的に誤った方向でのセットを不可能にする専用の位置決め治具を開発いたしました。この治具は、部品のC面取り形状に整合する形状となっております。部品が正しい向きの場合のみ、治具の形状に合わせて、所定の位置に隙間なく収まる仕組みになっています。
一方で、万が一部品を逆向きにセットしようとした場合には、部品の角(直角部分)が治具と物理的に干渉し、ベース板に密着させることができないため、誤った状態での溶接作業を確実に未然防止します。

これにより、「正しくなければセット(準備)すらできない」という、作業者の熟練度に依存しない強固なポカヨケ対策を確立いたしました。
今回の対策により、部品の向きを常に意識して確認する工数を削減しつつ、取り付けミスが物理的に発生しない安定した製造工程を実現いたしました。
現場目線と量産効率を見据えた、試作・設計段階での徹底的な「課題の膿出し」と積極的な改善提案力
岡部工業は、精密板金筐体の量産OEM製造において、実際の製作に入る前の試作段階や設計の検討段階における厳しい検討プロセスに大きな強みを持っています。
製品設計のエンジニアが機能や強度を重視する一方で考慮から漏れがちな、「実際の現場の加工機」や「量産時の効率性」といった生産現場の目線を岡部工業は持っています。この視点を活かし、量産着手前の試作段階で細かな検査を行い、量産時に起こり得るトラブルの種(小さな歪みや締結不良など)を見逃さずに徹底的な「膿出し」を行います。
そして、あぶり出した課題に対しては、ただ図面通りに作るのではなく、現場の生産技術を反映させた最適な設計変更や工法転換(VA/VE提案)を積極的にさせていただきます。。これにより、後の量産工程でのトラブルや手戻りを未然に回避するだけでなく、結果として大きなコストダウンやリードタイムの短縮を実現できる点が最大の強みです。
筐体の設計・製造、あるいは筐体の板金部品加工など、お困りのことがありましたら当社にお声掛け下さい。
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筐体設計・製造.COMでは、設計者・開発技術者様向けに、筐体板金加工に関する技術をまとめた、『技術ハンドブック』を発行しています。技術ハンドブックには、設計・開発段階からのコストダウンや品質向上を実現するための具体的なVA・VE提案を実際の事例に沿った形でイラスト付きで解説をしています。















